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「どこの訴訟だ。なに鍵屋、うん、相沢か」
「どうですか、掛りさうかね」
「それは、まあ、都会風でいけばそれでいゝわけだが」
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
だが、やつぱり戻らないで、しきりとこつちを見ながら行く。
と、横合から老父の道平が房一に寄り添つて来た。
「患者さんですよう」
「かういふ玩具おもちやのやうなものを出して、年甲斐もないことでした」
だが、今、房一は向ふから彼を認め、挨拶しようとしているのだつた。徳次は瞬間眼をそむけたが、又慌ててふり向いた。そして、その時川向ふでは房一が急いで自転車から降り立ち、口に手をあてて呼ぶのを見た。瀬音のために何だかよく聞えなかつた。だが、その姿は紛れもない房一、今までもう身分がちがふのだから仕方がないと半ばあきらめながら半ば怒りを感じていた一方、どこかに忘れられず残つていた幼友達の温味、――まさにそれだつた。
それは一尺近い美事な鮒だつた。だが、三匹きりなかつた。いかにも少いと徳次は路々思つて来た。さう思ふと、この鮒が本当よりもずつとちつぽけにさへ見えて来たのである。
「それで――?あゝ」
「さあね、もうかれこれ二十年にもなるだらうかね」
私は時間を忘れているが、ひょッとすると、一二分、又、一二分というように、ねむっているのかも知れない。頭のシンが疲れている時には、頭をシャボンの泡だらけにして、湯につかりながら、後頭部からコメカミへかけて十分も十五分も静かにもむこともある。両耳を抑えて、湯の中へ頭をもぐしこんでシャボンを落して、又、湯の温度に同化してしまう。